ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ケルセチンと磁鉄鉱を組合せて、ブロイラーをウェルシュ菌から守る

出典: Frontiers in Veterinary Science 2024, 11, 1474942

https://www.frontiersin.org/journals/veterinary-science/articles/10.3389/fvets.2024.1474942/full

著者: Afaf Al-Nasser, Azza S. El-Demerdash, Doaa Ibrahim, Marwa I. Abd El-Hamid, Hanan S. Al-Khalaifah, Ola M. El-borady, Eman Shukry, Mona M. El-Azzouny, Mona S. Ibrahim, Shereen Badr, Nahla S. Elshater, Tamer Ahmed Ismail, Shorouk El Sayed

 

概要: ウェルシュ菌とは、致命的な鶏の病気である壊死性腸炎の病原菌です。壊死性腸炎を発症しなくとも、ウェルシュ菌に感染した鶏は成長が妨げられ肉質が低下するため、養鶏業者に打撃を与えます。今回の研究では、ケルセチンと磁鉄鉱(酸化鉄を主成分とする強い磁性の鉱物)との組合せが、ウェルシュ菌に感染したブロイラーの生存率と腸の状態を改善することが示されました。

生後1日のブロイラー雛200羽を50羽ずつ4群に分け、以下の条件で38日間飼育しました。1) 通常の餌、2) 通常の餌に磁鉄鉱60 mg/kg添加、3) 通常の餌にケルセチン300 mg/kg添加、4) 通常の餌に磁鉄鉱60 mg/kgとケルセチン300 mg/kg添加。飼育途中の21~23日目には、全ての鶏にウェルシュ菌を感染させました。35日時点での死亡率は、1) 38%、2) 14%、3) 10% 、4) 4%でした。ウェルシュ菌に感染したため壊死性腸炎による死亡ですが、磁鉄鉱もケルセチンも単独で大幅に死亡率を減少しました。しかし、両者を組合せると死亡率は更に低下したことが分かります。同様の傾向が、腸内のウェルシュ菌の数にも見られました。ウェルシュ菌に限らず菌類は、コロニーと呼ばれる集団を作って生息します。便1 g中のウェルシュ菌のコロニーを比較しました。1) 約7000個、2) 74個、3) 100個、4) 44個となり、菌数は死亡率を反映しています。

磁鉄鉱とケルセチンとの組合せた効用は死亡を防ぐだけでなく、生き残ったブロイラーにも及びます。38日目の平均体重は1) 1918 g、2) 2254 g、3) 2281 g、4) 2506 gとなり、ウェルシュ菌が鶏の成長を妨げること・磁鉄鉱とケルセチンには成長を促進すること・両者の組合せはより成長に効果的であることが明らかになりました。次に腸の炎症の状態を比較すべく、IL-10という炎症抑制物質とIL-1βという炎症誘導物質の発現量を調べました。1)における発現量を1.0とした時の相対量はIL-10が2) 1.2、3) 2.5、4) 3.5で、IL-1βは2) 0.4、3) 0.5、4) 0.2でした。従って、ウェルシュ菌に起因する腸の炎症も、組合せが抑制効果を増強しています。

最後に、胸の筋肉における活性酸素種を調べました。活性酸素種とは、その組織に与えている損傷の指標で、肉用の鶏であるブロイラーの場合は胸肉の品質を左右します。検出された活性酸素種の量は、1) 86.10 μL/g、2) 39.30 μL/g、3) 32.89 μL/g、4) 32.11 μL/gとなり、組合せによる増強効果のない例外でした。しかしながら、磁鉄鉱もケルセチンも活性酸素種を著しく低減して、ウェルシュ菌による胸肉の品質低下を防いでいます。また、活性酸素種を除去する酵素の総量は1) 1.67 U/mg、2) 2.52 U/mg、3) 2.95 U/mg、4) 3.39 U/mgとなりました。

以上、ケルセチンと磁鉄鉱は、ウェルシュ菌に感染したブロイラーの命を守り、腸と筋肉の状態を良好にしました。単独でも効果がありましたが、評価項目の殆どで組合せが更に良い結果を与えました。

キーワード: 壊死性腸炎、ウェルシュ菌、ケルセチン、磁鉄鉱、ブロイラー、炎症、活性酸素種