ダサチニブとケルセチンの組合せは、老化細胞の除去機能を発揮して、 老齢マウスの白色脂肪組織へのリンパ球の浸潤を減らし代謝機能を改善する
出典: The FASEB Journal 2021, 35, Special Issue:Experimental Biology 2021 Meeting Abstracts, Physiology
https://faseb.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1096/fasebj.2021.35.S1.01969
著者: Md. Islam, Eric Tuday, John Kim, Tavia Dutson, Tam Phuong, Anthony Donato, Lisa Lesniewski
概要: 熱・紫外線・化学物質・微生物・活性酸素など、様々なストレスを細胞に与えると、細胞は何らかの損傷を受けます。軽微な損傷なら修復作用が働きますが、修復できない程の重篤な損傷の場合、もはや細胞の増殖は不可能となります。この増殖不可能な状態でありながら、死には至らない細胞を「老化細胞」と呼びます。最近、ケルセチンと白血病薬ダサチニブを組合せると、老化細胞が体内から除去されることが報告されました。それ以来、ケルセチンとダサチニブとの組合せで老化細胞の除去を基盤とする、様々な病気の治療法が世界中で研究されています。
2021年4月にオンライン開催された国際実験生物学会にて、ケルセチンとダサチニブとの組合せの最新の知見として、脂肪組織での挙動が報告されました。
22~24週の老齢マウス(ヒトなら約60~65歳に相当します)に、ケルセチンとダサチニブとを同時に投与しました。脂肪組織では、老化の指標となるp16という蛋白質の発現を良好に抑制しましたが、骨格筋では同じ働きが見られませんでした。別の言い方をすれば、贅肉の老化細胞は除去されても、筋肉の老化細胞は除去できなかったことを意味します。
脂肪組織の老化細胞が除去された結果、組織中のリンパ球の数が著しく減少しました。リンパ球は本来、脂肪組織に特有な物ではありませんが、老化細胞の存在で増えてしまいました。このような現象をリンパ球の浸潤と呼びますが、老化細胞の除去で正常化したことになります。
キーワード: ケルセチン、ダサチニブ、老化細胞、脂肪組織、リンパ球、浸潤