ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ケルセチンの摂取とカロリー制限を組合せて、肥満による肝機能の低下を改善する

出典: Biochemical and Biophysical Research Communications 2025, 742, 151073

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0006291X24016097

著者: Arezou Biyabani, Fereshte Ghorbani, Mehdi Koushki, Keivan Nedaei, Mina Hemmati, Nima Mahdei nasir mahalleh, Darya Ghadimi

 

概要: 肥満は万病の基と言われる位、生活習慣病や糖尿病のリスク因子に加えて、癌の進行を促進する要因になるのも肥満です。今回の研究では、肥満に伴う肝機能の低下を改善するには、ケルセチンの摂取とカロリー制限が有効であることが、マウスを用いる実験で示されました。面白いことに、両方の処置を組合せると、更に良好な結果となりました。

マウス30匹を6匹と24匹に分け、前者には通常の餌を与え正常群とし、後者には60%が脂肪分の高脂肪食を与えて肥満を誘発しました。当初は体重の違いはありませんでしたが、8週目には正常群が33 gで高脂肪食群は39 gとなり、差が見られ始めました。10週目では33 vs. 45 gと差は開く一方です。14週間の高脂肪食による肥満の誘発を終え、次に4週間の処置期間を設けました。24匹を6匹ずつ4群に分け、1) 処置なし、2) カロリー制限、3) ケルセチン15 mg/kgを毎日投与、4) カロリー制限とケルセチン投与の併用、の処置を行いました。カロリー制限は、餌の供給を2日間行い、次の1日は餌を与えないことを繰り返します。また、処置期間は高脂肪食をやめ、全ての群で通常の餌としました。処置期間が終了した後の体重は以下の通りです。正常群: 30 g、高脂肪食群1: 44 g、高脂肪食群2: 31 g、高脂肪食群3: 32 g、高脂肪食群4: 29 g。ケルセチンにもカロリー制限にも減量効果があり、単独処置で正常に近づきました。両処置を組合わせた4では、僅かながら正常を下回る程度に体重が減少しています。

次に肝機能を比較しました。健康診断で肝機能を調べる時と同様に、血中のALTを指標としました。ALTとは肝臓に存在してエネルギー代謝を担う酵素ですが、肝臓が損傷すると血液に流れ出します。従って、血液にALTが多くなる程肝臓の損傷が進行しており、肝機能の低下を意味します。測定値は以下の通りでした。正常群: 25 U/L、高脂肪食群1: 60 U/L、高脂肪食群2: 35 U/L、高脂肪食群3: 33 U/L、高脂肪食群4: 28 U/L。データから2つのことが分かりました。一つは、肥満が肝機能を低下した事実です。もう一つは、ケルセチンもカロリー制限も肝機能を改善しましたが、最も正常に近づけた処置が両者の組合せという結果です。

冒頭に述べた肥満が多くの病気を招く原因として、肥満による酸化ストレスが指摘されています。酸化ストレスとは、体に錆ができる様なもので、体の錆が損傷を進行します。従って、肝臓が損傷して肝機能が低下した原因として、酸化ストレスの指標であるマロンジアルデヒドという物質の肝臓中の濃度を比較しました。マロンジアルデヒドとは脂肪が酸化された時の残骸です。正常群: 3.5 μM/L、高脂肪食群1: 7.8 μM/L、高脂肪食群2: 5.0 μM/L、高脂肪食群3: 5.8 μM/L、高脂肪食群4: 4.7 μM/L。予想通り、肥満は肝臓に酸化ストレスを誘発しましたが、ケルセチンとカロリー制限が軽減しましたが、最も有効な処置は組合せでした。

肥満の解消法として、多くの人はカロリー制限に注目しますが、これにケルセチンの摂取を追加したい所です。今回の結果が示すように、カロリー制限のみの効果を上回ることが期待できます。

キーワード: 肥満、肝機能、ケルセチン、カロリー制限、酸化ストレス