ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

水溶性ケルセチンによる、加齢に伴う不妊の克服

出典: Frontiers in Veterinary Science 2025, 12, 1506029

https://www.frontiersin.org/journals/veterinary-science/articles/10.3389/fvets.2024.1506029/full

著者: Hiromitsu Tanaka, Satona Ichihara

 

概要: 加齢で身体機能が低下する原因は様々ですが、酸化ストレスは主要因の一つです。酸化ストレスは体に錆ができる様なもので、体の錆が組織を傷つけ、機能の低下を招きます。生殖機能に関しても例外ではなく、生殖を担うオスの精子やメスの卵母細胞の機能が加齢による酸化ストレスで低下するため、子孫が残せなくなります。今回の研究では、ケルセチンが有する抗酸化作用に着目しました。すなわち、ケルセチンが加齢で低下した生殖機能を回復し、高齢マウスでも子孫が残せることが発見されました。

高齢のオスマウス(12月齢以上)と若年のメスマウス(2月齢)とで、ペアを形成しました。12月齢以上のオスは生殖機能が低下しているため、ペアから子孫は望めそうにもありません。実際、ペアを同一の飼育箱に2ヶ月間入れても、妊娠率はゼロでした。そこで、ケルセチンの抗酸化作用が、生殖機能を改善する可能性を実験で検証しました。餌と飲み水を自由に摂取できる飼育法で、1日平均の餌の消費量が5 gであった観察に基づいて、5 gの餌に6 mgのケルセチンを混ぜました。よって、マウスは1日当たり平均で6 mgのケルセチンを摂取したことになります。その結果、2ヶ月以内に20ペアの内、2ペアが妊娠して妊娠率10%を記録しました。

ケルセチンの投与で妊娠率をゼロから10%に引き上げた結果を受けて、次にケルセチンと似た物質でも同様の効果があるかを知るべく、ルチンとユビオケルセチン®を対象に選びました。ルチンとは、ケルセチンに2個の糖が結合した構造です。ユビオケルセチン®とは、ケルセチンを水に溶やすく改良した素材で最近開発されました。これらをケルセチンの時と同様に餌に混ぜて、1日に6 mg摂取した時の2ヶ月以内に観察された妊娠率は、20%と30%でした。ルチンはケルセチンより良好な結果を示し、ユビオケルセチン®は更に妊娠率が向上しましたが、水溶性を付加したことによる体内吸収の促進が、妊娠率の引き上げに寄与したと考えられます。

次に反対のパターンである、若年のオスマウス(2月齢)と高齢のメスマウス(8月齢以上)とのペアで、同様の実験を行いました。2ヶ月以内の妊娠率は、無添加の餌: 10%、ケルセチン: 10%、ルチン: 20%、ユビオケルセチン®: 30%となりました。ここでもユビオケルセチン®が最も有効であり、オスとメスの両方の生殖機能を回復しています。

妊娠しにくいカップルを対象にした妊活サプリを良く見かけますが、その多くは女性の体質を改善して妊娠しやすくする機能です。しかし、今回のデータが示すようにケルセチンとその仲間は、女性と男性の両方に有効であることを示唆しました。その本質は、加齢に伴う酸化ストレスの抑制にあります。酸化ストレスは性別とは関係なく起こりますので、これをケルセチンで解消した結果、オス・メスを問わず生殖機能の低下を克服できました。また、効果は水溶性によって増強されました。

キーワード: 加齢、酸化ストレス、生殖機能、妊娠率、ケルセチン、ルチン、ユビオケルセチン®