ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

月経前不快気分障害におけるうつ様行動は、ルチンが軽減する

出典: Frontiers in Pharmacology 2025, 16, 1525753

https://www.frontiersin.org/journals/pharmacology/articles/10.3389/fphar.2024.1525753/full

著者: Xiangjun Wang, Xiaowen Xia, Xianliang Song, Yi Zhou, Mingyu Ma, Yashuang Ren, Xitai Chen, Zenghui Xia, Yinghui Guo, Chunhong Song

 

概要: 月経前不快気分障害とは、月経が始まる3~10日前の心身が不安定な状態です。憂うつな気分、不安、情緒不安定、怒り、イライラのため、時に社会活動に支障をきたします。はっきりとした原因は分かっていませんが、女性ホルモンとの関連が指摘されています。今回の研究では、ケルセチンに糖が2個結合したルチンが、月経前不快気分障害におけるうつ様行動を減少することが、ラットを用いる実験で示されました。

ラットの発情周期は、膣内の電気抵抗で知ることができます。3 kΩ以上であれば受胎が可能な俗に言う発情期にあり、3 kΩ以下の時が受胎できない非受容期です。ラットの場合、膣内の電気抵抗が低下する非受容期は3日間続きますが、この時期が人間の月経前に相当します。非受容期に、ラットの体を1日6時間拘束してストレスを与え、月経前不快気分障害のモデルとしました。

モデルの妥当性を検証すべく、社会的相互作用試験という評価実験を行いました。55 × 26 cmの箱を3個用意し、Yの字になるようにつなぎ、ラットが自由に往来できる様にします。一つの箱に試験するラットを入れ、別の箱には同年齢で馴染みのないラットを入れ、第三の箱にはおもちゃを入れました。試験は5分間行い、馴染みのないラットとの接触回数と接触時間を測りました。ラットよりもおもちゃの方を選ぶなら、社会的相互作用を避けるうつ様行動であると判断します。体を拘束しない正常ラットの接触回数は12回で、接触時間は115秒でした。一方、拘束したラットでは7回と75秒に低下しており、うつ様行動が現れました。重要なことに、数日が経過した膣内の電気抵抗が3 kΩ以上の発情期では、両群間に差がなくなり、9 vs. 10回と115 vs. 115秒が記録されました。従って、うつ様行動が増えるのは非受容期に限定されており、月経前不快気分障害のモデルとしての妥当性が検証されました。

妥当性が成立したので、ルチンの効果を調べました。体を拘束したモデルラットを2群に分け、片方はルチン8.65 mg/kgを8日間連続して投与し、もう片方には投与しませんでした。なお、この投与期間でも膣内の電気抵抗が低下した非受容期であれば、体を拘束してストレスを負荷します。投与期間が終了した、次の非受容期に三度目の社会的相互作用試験を行いました。接触回数は正常群: 10.5回、非投与群: 6.5回、ルチン投与群: 9.5回で、接触時間は正常群: 160秒、非投与群: 95秒、ルチン投与群: 135秒でした。ルチンによるうつ様行動の軽減効果が、見事に実証されました。

うつ様行動の評価として、この連載で再三述べている強制水泳試験も行っています。詳細なデータは省略しますが、体を拘束した月経前不快気分障害のモデルでは静止時間が長くなり、ルチンの投与で改善されました。

月経前不快気分障害は適切な治療法がないため、時間が過ぎるのを待つだけが現状です。まだ動物実験の段階ですが、人間にも有効であれば、ルチンは女性の強い味方になりそうです。

キーワード: 月経前不快気分障害、うつ様行動、ルチン、社会的相互作用試験