ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

イソケルシトリンα配糖体と大豆線維との組合せはケルセチンの体内吸収を促進して病態ラットのグルカゴン様(よう)ペプチド-1の分泌とグルコース恒常性を改善する

出典: Journal of Agricultural and Food Chemistry 2021, 69, 5907–5916

https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.jafc.1c01388

著者: Aphichat Trakooncharoenvit, Hiroshi Hara, Tohru Hira

概要: ケルセチンの類似物質の一つに、イソケルシトリンがあります。ケルセチンに1個の糖が結合した形です。このイソケルシトリンを酵素処理すると、さらに糖が増えたイソケルシトリンα配糖体が得られます。イソケルシトリンもイソケルシトリンα配糖体も、摂取すると腸で糖部分が切断され、ケルセチンの形で体内に吸収されることが知られています。

ラットの餌に、イソケルシトリンα配糖体だけを混ぜた場合と、イソケルシトリンα配糖体と大豆線維を混ぜた場合を比較しました。9週間食べさせた後、血中のケルセチン濃度を比較すると、前者より後者の方が高く観測されました。大豆線維が、ケルセチンの吸収効率を上げた結果です。

次に、餌に脂肪と糖を多く混ぜて、ラットに食べさせる実験をしました。ラットは糖尿病のような状態になりますが、いわば脂肪と糖を食べ過ぎた人が糖尿病に罹ったことのシミュレーションと言えます。具体的には、血糖値が上がり、またグルカゴン様(よう)ペプチド-1(インスリンの放出を促すホルモン)の分泌が減り、典型的な糖尿病の症状を呈しました。面白いことに、餌に脂肪と糖に加えて、イソケルシトリンα配糖体と大豆線維も混ぜて食べさせると、血糖値もグルカゴン様(よう)ペプチド-1の分泌も、正常の範囲内に収まりました。

この実験結果は、ケルセチンによる糖尿病の予防を強く示唆しており、非常に興味深いデータと言えましょう。

キーワード: ケルセチン、イソケルシトリン、イソケルシトリンα配糖体、大豆線維、グルカゴン様(よう)ペプチド-1、グルコース恒常性、糖尿病