ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

レパグリニドとケルセチンとの相互作用、肝臓における薬物代謝の阻害について

出典: Pharmaceutics 2021, 13, 782

https://www.mdpi.com/1999-4923/13/6/782

著者: Ji-Min Kim, Seong-Wook Seo, Dong-Gyun Han, Hwayoung Yun, In-Soo Yoon

 

概要: レパグリニドは、血糖値を下げる働きがあり、糖尿病の治療に使われます。肝臓には、ミクロソームと呼ばれる薬物代謝酵素を含む成分があります。薬物代謝とは、飲んだり注射した薬が違う形に変化する現象で、食物が消化されるのと同じイメージです。レパグリニドは飲み薬ですが、一部は肝臓ミクロソームで代謝されて、無力化されます。いわば、代謝を受けずに生き残った一部のレパグリニドだけが腸から吸収され、体内に入り、血糖値を下げることになります。

今回の研究では、ケルセチンが肝臓ミクロソームを阻害することを明らかにしました。IC50値(阻害作用が50%となる濃度)は、ラットの肝臓ミクロソームに対しては16.7 μM、ヒトの肝臓ミクロソームに対しては3.0 μMと、非常に強い阻害作用を示しました。

ケルセチンが肝臓ミクロソームを阻害するなら、同時にレパグリニドを投与しても、代謝される度合いが減り、より多くの生き残りが期待されます。そこで、次の実験を行いました。

ラットに、レパグリニドだけ飲ませた場合と、レパグリニドとケルセチンを同時に飲ませた場合を比較しました。その際の、レパグリニド血中濃度を比較したのが下の図です。後者は前者に比べて吸収性が向上したことを、如実に示しています。最大レパグリニド濃度は1.88倍になり、総吸収量は1.83倍に向上しました。

図: ラットの血中レパグリニドの経時変化

出典: Ji-Min Kim et al, Pharmaceutics 2021, 13, 782

 

キーワード: ケルセチン、レパグリニド、肝臓ミクロソーム、薬物代謝、糖尿病