ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

臨床研究が実証した、重症βサラセミアの小児患者におけるケルセチンの有効性

出典: Egyptian Pediatric Association Gazette 2025, 73, 9

https://link.springer.com/article/10.1186/s43054-025-00347-w

著者: Fatma Al Zahraa Sherai, Maaly Mabrouk, Ibrahim Badraia, Adel Hagag, Eman Elaskary

 

概要: 血液で酸素を運ぶヘモグロビンは4個の鎖で構成していますが、その一つにβ鎖と呼ばれる部位があります。βサラセミアとは、β鎖が遺伝的に作れない病気です。ヘモグロビンの形状異常による酸素不足のため、βサラセミアの主な症状は貧血です。他に、疲労感や息切れ、顔面蒼白が症状に現れる場合もあります。軽症のβサラセミアであれば特に治療の必要はありませんが、重症になると輸血で貧血に対応します。また、頻繁に輸血を行うと、血中の鉄分が必要以上に上昇するため、鉄を排除する薬の投与も行われます。今回の研究では、ケルセチンが重症βサラセミアの小児患者の症状を改善して、輸血を必要とする回数が大幅に減少しました。

この研究は、2021~2023年にかけて、エジプトのタンタ大学病院血液腫瘍科にて、無作為化・二重盲検・プラセボ対照で行われました。8~18歳の重症βサラセミアの患者72名をランダムに2群に分けました(無作為化)。片方の36名は介入群として、ケルセチン500 mgを1日1回摂取しました。もう片方の36名は、ケルセチンでないプラセボ(偽薬)を1日1回摂取して対照群としました(プラセボ対照)。12週間の摂取期間は勿論、全てのデータ解析が完了するまでは、各被験者がどちらの群に属するか、被験者本人にも医療従事者にも一切知らせません(二重盲検)。また、摂取するケルセチンおよびプラセボの見た目を統一して、ケルセチンかプラセボか判断できないように仕組まれています。

摂取期間の前後に血液検査を行い、各項目の変化量から治療効果を検証しました。ケルセチン摂取群の血中のヘモグロビン量は、6.69±0.50 g/dLから7.68±0.29 g/dLに変化しており、約1 g/dL増えました。一方、対照群では6.77±0.42 g/dLと6.83±0.42 g/dLであり、ほとんど変化していません。フェリチンという蛋白質は、体内に鉄分を貯め込む働きがあります。冒頭で輸血を繰り返すと鉄分が上昇すると述べたのは、このフェリチンが寄与した結果です。血中のフェリチン濃度は、ケルセチン摂取群で2299.81 ng/mLから1967.5 ng/mLと大幅に減少しましたが、対照群では2968.06 ng/mLから2972.22 ng/mLと変化なしでした。1週間に要する輸血の回数は、ケルセチン摂取群で3±0.86回から1.5±1.11回に減少しましたが、対照群では摂取前後の両方とも2.99±0.69回でした。摂取前のデータをケルセチン摂取群 vs. 対照群で比較した場合、ヘモグロビン・フェリチン・輸血の回数の全てにおいて差がない状態で試験をスタートしました。一方、摂取後のデータを統計的に処理すると3項目とも、ケルセチン摂取群が優れている確率が99.9%、対照群が優れている確率が0.1%と算出されました。従って、ケルセチンがβサラセミアの症状を改善した、と結論できます。

以上、βサラセミアは遺伝性の病気でありながら、ケルセチンの摂取でヘモグロビンを増大し、鉄の過剰な上昇を抑制し、輸血の回数を減らすことに成功しました。重症βサラセミアで治療を行わず放置すると20~30歳で死亡すると言われており、小児患者で有効性を示した点にもケルセチンのパワーを感じます。

キーワード: 重症βサラセミア、ケルセチン、ヘモグロビン、フェリチン、輸血、臨床研究