ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ケルセチンは腸内細菌叢を介して、高脂肪食に起因する肥満を改善する・後編

出典: Advanced Science 2025, 12, 2412865

https://advanced.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/advs.202412865

著者: Jiaqi Liu, Youhua Liu, Chaoqun Huang, Chuan He, Tongyudan Yang, Ruiti Ren, Zimeng Xin, Xinxia Wang

 

前編より続く

概要: ケルセチンが腸内のAM菌を増やして、高脂肪食が原因の肥満を抑制したことが分かりました。それでは、AM菌はどの様にして肥満を抑制するのかという疑問が湧いてきます。

そこでAM菌によるマウス体内の変化を知るべく、高脂肪食のみ投与した6)と、高脂肪食と生きたAM菌を両方投与した7) を詳しく調べました。その結果、6)に比べて7)で増加した物質19種類と減少した1種類を特定しました。いずれも、AM菌を摂取して体内で増減した物質です。増加した物質の中の一つにコール酸という物質があり、これが計20種類の中で最も肥満と関連がありそうでした。果たしてコール酸が肥満を抑制するのか、三度目のマウスを用いる実験を行いました。前編からの通し番号とするので、9) 高脂肪食のみ、10) 高脂肪食とコール酸の投与を比較しました。今回は簡略化すべく、投与期間を10週間から5週間に変更して、体重の増加のみ測定して体脂肪は省略しました。得られたデータは9) 8.0 g、10) 4.5 gとなり、ケルセチンやAM菌と同様に、コール酸も肥満を顕著に抑制しました。

体脂肪を測定しない代わりに、脂肪組織における遺伝子の発現状況を調べました。10)におけるfxrという肥満を抑制する遺伝子は、9)に比べて発現が2.4倍でした。また、炎症を誘発する遺伝子は10)で減少していました。従って、コール酸がマウスの脂肪組織に直接働いて、肥満と炎症を抑制することが分かりました。

肥満を直接抑制したコール酸とは、肝臓で作られますが、その原料はコレステロールです。すなわち、肝臓に存在するCYP8B1という酵素がコレステロールを酸化すると、コール酸に変換されます。AM菌がコール酸が増加した仕組みとして、CYP8B1の挙動に着目しました。そこで、AM菌を投与した実験に遡って、各マウスの肝臓を調べました。AM菌を投与した7)の肝臓におけるCYP8B1の量は、高脂肪食のみ投与した6)の約2倍でした。また、培養した肝細胞を用いる実験でも、AM菌の存在の有無で、CYP8B1の量に約2倍の開きがありました。従って、肝細胞(すなわち肝臓で)におけるコレステロールの変換酵素であるCYP8B1を2倍にして、AM菌がコール酸を増加した仕組みが明らかになりました。

これで全ての因果関係が明確になりました。ケルセチンの摂取→腸内でAM菌が増える→肝臓でCYP8B1が2倍になる→コレステロールのコール酸への変換が活発になりコール酸が増える→脂肪組織で肥満と炎症が抑制される。肥満の防止に私たちが出来ることは、ケルセチンの摂取です。これさえ実践できれば、後はAM菌やコール酸が勝手に働いてくれます。

キーワード: 肥満、ケルセチン、アッカーマンシア・ムシニフィラ、コール酸、コレステロール