ケルセチンは心筋梗塞の予後を改善する
出典: International Immunopharmacology 2025, 151, 114296
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1567576925002863
著者: Lexun Wang, Shaolin Lin, Quxing Wei, Tongjun Li, Quqian Mo, Ruining Bai, Jiaojiao Feng, Angyu Zhan, Xiao Yang, Xianglu Rong, Jiao Guo
概要: 心筋梗塞とは冠動脈(心臓を冠にように覆っている動脈)の梗塞(詰り)が原因で、心筋(心臓を構成する筋肉)に血液が行き届かなくなり、壊死(組織の破壊)を起こす病気です。首尾よく梗塞が解消して再び血液が流れても、壊死した部分が線維状に変化すると、心機能の低下を招きます。今回の研究では、心筋梗塞による心筋の線維化をケルセチンが抑制して、心機能を維持したことが発見されました。言い換えれば、ケルセチンが心筋梗塞の予後を改善しました。
心電図にてマウス47匹の心臓の状態を調べた後、2群に分けました。20匹には毎日ケルセチン50 mg/kgを2週間投与し、残る27匹は無投与群としました。投与期間が終了した後、各マウスに胸を開く手術を施し、心臓の前面にある冠動脈の枝を糸で縛りました。糸は残したまま縫合して、心筋に血液が行き届かなくなる心筋梗塞のシミュレーションとしました。手術から7日後に2度目の心電図検査を行い、ケルセチン投与の影響を調べました。
心臓は4つの部分で構成されますが、その中の一つである左室は、心臓から全身に血液を送り出すポンプの役目を担っています。いわば心臓の働きの中心的な存在です。この左室の大きさは、最初の検査では両群とも3.1 mmでした。2度目の心電図では、非投与群が5.3 mm、ケルセチン群が3.6 mmを示しました。また、心機能の指標となる1回の鼓動で送る血液の体積の左室に対する割合は、最初の検査の63%に対して、2度目は非投与群が24%、ケルセチン群が56%でした。よって、心筋梗塞により心肥大が起き、心機能が低下したことの2点を意味します。しかし、ケルセチンの前投与は、心筋梗塞の状態にも拘わらず、心肥大と心機能の低下の両方を最小限にしたと言えましょう。
送り出す血液が少なくなったので、心機能の低下と見なしました。心臓が硬くなり動きが鈍った結果と考えられるので、心組織を硬直する線維化の度合いを比較しました。線維化した心筋の割合は、非投与群が33%、ケルセチン群が6%でした。別途に用意した正常なマウスの心筋では、線維化の割合が2%だったため、ケルセチンの前投与は心筋梗塞に伴う心筋線維化を正常近くまで軽減しています。また、梗塞部分の割合は、非投与群が34%、ケルセチン群が10%、正常が1%以下でした。冠動脈の縛りが残っていながら、状態がここまで違うのは2週間に渡るケルセチン投与の有無でした。
最後に、両群の梗塞部分に存在するCD86という蛋白質の挙動を調べました。CD86には正反対の性質を示す2種類があり、互いに行ったり来たりしています。一つはiNOSという蛋白質が結合した炎症を誘導する型で、もう一つはArg-1という蛋白質が結合した炎症を抑制する型です。非投与群は誘導型が50%で抑制型が36%の構成でしたが、ケルセチン群では24%と59%に逆転しました。
以上、ケルセチンは心筋梗塞の進行を抑制し、付随する心肥大と心筋線維化を抑制して、心機能の低下は最小限に留めました。ケルセチンの前投与がCD86の炎症抑制型を増やして、心筋の抗炎症作用を強化したからです。普段からケルセチンを多く含む玉ねぎやリンゴを摂取して、心筋の守りを固めつつ、心筋梗塞を予防しましょう。
キーワード: 心筋梗塞、ケルセチン、左室、心肥大、心機能、心筋線維化、CD86