閉経後の女性によるケルセチンの摂取は、健康な骨の維持に役立つ
出典: Journal of Bone and Mineral Metabolism 2025, 43, in press
https://link.springer.com/article/10.1007/s00774-025-01592-0
著者: Alyssa R. Bailly, Garrett M. Hester, Michaela G. Alesi, Robert J. Buresh, Yuri Feito, Christine M. Mermier, Jeremy B. Ducharme, Trisha A. VanDusseldorp
概要: 閉経は女性ホルモンの分泌を著しく減少します。女性ホルモンには、新しい骨を作り(骨形成)古い骨を壊す(骨吸収)バランスを維持する重要な働きがあります。閉経で女性ホルモンが不足すると、骨形成よりも骨吸収の方が活性化され、骨が減少してもろくなるため、骨粗鬆症を発症しやすくなります。今回の研究では、閉経後の女性がケルセチンを摂取すると、骨の健康を維持できることが示されました。以前の連載で、卵巣を摘出して閉経後をシミュレーションした動物実験におけるケルセチンの効果を紹介しましたが、今回は大幅に進歩したヒト試験の結果です。
この研究は、45~75歳の閉経した女性33名を対象に無作為化・二重盲検・プラセボ対照で行われました。被験者をランダムに2群に分け(無作為化)、片方の15名は介入群としてケルセチン500 mgを1日1回摂取しました。もう片方の18名は、ケルセチンでないプラセボ(偽薬)を1日1回摂取して対照群としました(プラセボ対照)。90日間の摂取期間は勿論、全てのデータ解析が完了するまでは、各被験者がどちらの群に属するか、被験者本人にも研究遂行者にも一切知らせません(二重盲検)。また、摂取するケルセチンおよびプラセボの見た目を統一して、ケルセチンかプラセボか判断できないように仕組まれています。
摂取期間の前後に血液検査を行い、骨形成に関連する蛋白質の変化を検証しました。オステオカルシンは骨形成を担う骨芽細胞が分泌する蛋白質で、骨の中でカルシウムと強力な結合を生じるため、丈夫な骨を維持する重要な役割を担います。また、一部のオステオカルシンは骨から血液に流出して膵臓でインスリンを活性化することが知られており、骨形成と糖尿病が密接に関係する証拠の一つに挙げられています。話は横道に逸れましたが、オステオカルシンを作れるのは骨芽細胞のみですから、たとえ一部であっても血液に流出した分を測定すれば、骨形成のバロメータとなります。ケルセチン群の血中オステオカルシン濃度は摂取期間の前後で、28.89 ng/mLから34.09 ng/mLに変化しており、18%増加しました。一方、対照群では26.96 ng/mLと27.44 ng/mLであり、ほとんど変化していません。このデータを統計的に処理すると、ケルセチン摂取群が優れている確率が99.84%、対照群が優れている確率が0.16%と算出されました。また、I型コラーゲン前躯体N-ぺプチド(PINP)とは、骨の成分の9割を占めるI型コラーゲンが作られる初期段階の原料ですので、血中の量が骨形成の指標であり、骨粗鬆症の検査項目にも入っています。このPINPもオステオカルシンと同様に、ケルセチン摂取群で顕著に増加し、対照群では横ばいでした。
従って2種類の指標で、ケルセチンはプラセボ対照と比べ有意であり、骨形成を活性化しました。ケルセチンの摂取は、閉経後の女性が健康な骨を維持するのに有効です。別の言い方をすれば、ケルセチンの摂取で骨粗鬆症の発症リスクを低減したとも言えます。
キーワード: 閉経、女性ホルモン、ケルセチン、骨形成、オステオカルシン、骨粗鬆症、臨床研究