ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ハス葉エタノール抽出物のケルセチン-3-O-グルクロン酸抱合体は、 GABA系神経伝達に関与して睡眠の量と質を向上させる

出典: Molecules 2021, 26, 3023

https://www.mdpi.com/1420-3049/26/10/3023

著者: Singeun Kim, Ki-Bae Hong, Kyungae Jo, Hyung Joo Suh

 

概要: ケルセチンの類似物質の一つに、ケルセチン-3-O-グルクロン酸抱合体があります。ケルセチンに1個の糖が結合した形です。今回の研究では、ケルセチン-3-O-グルクロン酸抱合体が睡眠の量と質の両方を向上させることが示されました。

乾燥したハスの葉を70%エタノール水に入れ、80~90℃で6時間熱した後、上澄みの液体部分を留去(蒸発させて除くこと)して抽出物を得ました。この抽出物を分析したところ、ケルセチン-3-O-グルクロン酸抱合体が主成分でした。

マウスに抽出物を飲ませて、飲ませない場合と睡眠時間を比較したところ、抽出物を飲んだマウスの方が長くなりました(約40分 vs. 60分)。ただし、眠りに着くまでの時間はどちらも約4分で、差がありませんでした。睡眠中の脳波を測定すると、シータ波が出ている時間は、抽出物を飲んだ時がはるかに長いことが分かりました。シータ波とは、浅い睡眠時に見られ、覚醒モードから睡眠モードに切り替わる際に見られる脳波です。従って、シータ波の観測時間が長くなると、睡眠の質が向上したことを端的に示しています。

また、実験動物の体内からは、ケルセチン-3-O-グルクロン酸抱合体とGABA受容体とが結合した錯体が確認されました。GABA受容体を作動さると、重要な神経伝達物質であるGABA(ガンマアミノ酪酸)が働いて、脳の活動を休ませて睡眠に導くことが知られています。従って、ケルセチン-3-O-グルクロン酸抱合体による睡眠の量と質の向上は、GABA系神経伝達の関与が強く示唆されました。

キーワード: ハス葉抽出物、ケルセチン-3-O-グルクロン酸抱合体、睡眠、シータ波、GABA受容体作動