ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

アルツハイマー病のマウスモデルにおいて、 ルチンはタウ蛋白質病理と神経炎症を予防する

出典: Journal of Neuroinflammation 2021, 18, 131

https://jneuroinflammation.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12974-021-02182-3

著者: Xiao-ying Sun, Ling-jie Li, Quan-Xiu Dong, Jie Zhu, Ya-ru Huang, Sheng-jie Hou, Xiao-lin Yu, Rui-tian Liu

 

概要: ケルセチンの類似物質の一つに、ルチンがあります。ケルセチンに2個の糖が結合した、ケルセチン配糖体です。アルツハイマー認知症と深く関係する、タウ蛋白質という原因物質があります。今回の研究では、タウ蛋白質の凝集を、ルチンが阻害することが初めて見出されました。

タウ蛋白質を作らせる遺伝子を導入したマウスは、神経細胞内にタウ蛋白質が凝集して、やがて脳が萎縮して行きます。いわば、ヒトのアルツハイマー認知症を、マウスでシミュレーションした形です。

強制的にアルツハイマー認知症を発症させたマウスですが、ルチンを飲ませると、その症状が劇的に改善されました。

モリスの水迷路という、空間的な記憶と学習能力を調べる実験があります。直径110cmのプールにマウスを泳がせる実験ですが、プールは1カ所だけ浅い(直径10cm、水深1cm)場所がありますが、水は濁らせておきます。従って、浅瀬の位置は見えず、周囲の景色から判断するしかありません。まず、マウスに1日2回の学習をさせました。60秒間泳がせ、浅瀬に着いたら10秒間滞在させました。24時間後に本試験を行い、浅瀬を取り去り、元あった場所への到達時間を図りました。空間位置を的確に認識出来れば、目的地により早く到達できます。ルチンを飲ませたマウスは、飲ませない場合と比べて、到達時間が非常に短縮されました。しかも到達時間、遺伝子を導入しない正常なマウスに近づきました。

この結果は、アルツハイマー認知症で欠損した空間認知力は、ルチンで回復できる可能性を強く示唆しています。

キーワード: ルチン、ケルセチン配糖体、アルツハイマー認知症、タウ蛋白質、凝集阻害、動物実験、モリスの水迷路、空間認知