リンゴジュースの搾りかす由来のイソケルシトリンは、 神経毒MPTPによるラットのパーキンソン病モデルマウスの神経を保護する
出典: Food & Function 2021, 12, 6091–6101
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2021/fo/d1fo00843a#!divAbstract
著者: Cong Liu, Wenjuan Wang, Hao Li, Jiangang Liu, Peng Zhang, Yong Cheng, Xiaoyan Qin, Yang Hu, Yun Wei
概要: パーキンソン病とは、脳神経の異常で、体の動きに支障をきたす病気です。症状には、歩幅が狭くなる、歩く速度が極端に遅くなる、バランスがとれず転倒しやすい、手足が震える、などがあります。主な原因は、脳から全身の筋肉へ指令を伝達する、神経組織の損傷です。
ケルセチンの類似物質の一つに、イソケルシトリンがあります。ケルセチンに糖が1個結合した形です。イソケルシトリンがパーキンソン病の治療薬として期待できる動物実験が、最近、報告されました。
マウスに神経毒を注射すると、パーキンソン病のような状態に陥りました。45度に傾けた木の棒を固定し、その上端にマウスを置き、無事に下まで降りられるかを実験しました。パーキンソン病が進行すれば、体の動きが鈍りますので、降りるには時間が余計にかかります。神経毒のおかげで所要時間は、3倍以上になってしまいました。
しかし、1週間イソケルシトリンを毎日飲ませたマウスは、神経毒の影響を受けません。棒を降りる時間は、ほとんど変わりませんでした。マウスの神経を調べると、あらかじめイソケルシトリンを飲んでおけば、飲まない場合と比べて、神経毒による減少が極端に少ないことも分かりました。
なお、研究に用いたイソケルシトリンは、リンゴジュースの搾りかすを精製して得ております。廃棄物を有効活用して、有用なパーキンソン病の薬を作るという観点からも、興味深い研究です。
キーワード: パーキンソン病、イソケルシトリン、ドーパミン、リンゴジュース、搾りかす