中枢神経が乳癌の進行を直接調節することは可能だが その経路はケルセチンが遮断する
出典: Annals of Translational Medicine 2021, 9, 999
https://atm.amegroups.com/article/view/72056/html
著者: Tianyu Luo, Yanmei Zhang, Xiaoyuan Liu, Qianyi Liang, Ling Zhu, Hai Lu, Huachao Li, Hongyan Zhang, Chunmin Yang, Jiahua Wu, Rui Xu, Yuzhu Zhang, Qianjun Chen
概要: うつ病とは、気分の落ち込みや喜びの喪失が約2週間続く気分障害に加え、眠れない、食欲がない、疲れやすい等の身体的症状も現れます。その主な原因として、脳内の神経伝達物質が不足することが挙げられます。
マウスを1日4時間拘束し30日間継続すると、そのストレスからうつ病の症状を示します。広い場所でも動き回る時間が極端に減り、明るい箱と暗い箱をつないだ中に入れると暗所でじっとしています。また、ドーパミンやアドレナリンなどの神経伝達物質も、激減しました。次に、漢方薬として用いられている逍遥散(しょうようさん)を与えたマウスに、拘束ストレスを同様に与えました。行動様式や神経伝達物質は正常と変わらず、うつ病の症状は現れませんでした。
面白いことに、拘束ストレスを同様に与えただけのマウスには、うつ病に加えて、乳癌の初期段階も見られました。逍遥散を飲ませたマウスは、線種段階(乳癌の危険信号として診察されるが発症には至らない状態)に留まりました。この事実は、うつ病による中枢神経の損傷が乳癌の進行を促しますが、逍遥散が防止したことを意味します。
拘束ストレスで増えた蛋白質25種の内、14種が逍遥散で減りました。反対に、拘束ストレスで減った蛋白質52種の内、9種が逍遥散で増えました。これらの知見を基に、 蛋白質間相互作用のデータベースと天然物のデータベースを使って、関与成分の特定を試みました。その結果、逍遥散に含まれるケルセチンと結論しました。
中枢神経の損傷で乳癌が進行する経路は、この通り、ケルセチンによって遮断されました。
キーワード: うつ病、乳癌、逍遥散(しょうようさん)、ケルセチン