ケルセチンは膵臓リパーゼを阻害し、脂肪の吸収を減少する
出典: Food Bioscience 2021, 43, 101248
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2212429221003734
著者: J.-F. Zhou, W.-J. Wang, Z.-P. Yin, G.-D. Zheng, J.-G. Chen, J.-E. Li, L.-L. Chen, Q.-F. Zhang
概要: 膵臓で分泌されるリパーゼは、脂肪を分解する働きがあります。食事で摂取した脂肪は十二指腸で消化(脂肪酸とグリセリンに分解)されますが、膵臓から十二指腸に送られる膵液に、消化酵素であるリパーゼが含まれているためです。
最近の研究で、ケルセチンには膵臓リパーゼの働きを阻害することが分かりました。ケルセチン・リパーゼ・脂肪の3種の挙動を詳しく調べました。脂肪が分解される際、脂肪はリパーゼと結合します。これを脂肪-リパーゼ複合体と呼びます。複合体にケルセチンが近づくと、脂肪が結合している場所の近傍に、ケルセチンが結合します。その結果、複合体の形が変化しますので、もはや脂肪は分解されなくなります。これが、ケルセチンのリパーゼ阻害作用です。
マウスにケルセチンを飲ませて、飲ませない場合と血液成分を比較したところ、脂肪分が著しく減少しました。一方、マウスの糞を分析すると、ケルセチンを飲んだマウスの方が、脂肪分が高いことが分かりました。この実験事実は、餌に含まれる脂肪の吸収が抑制され、排出が促進されたことを端的に示しています。脂肪は消化(分解)されて、脂肪酸とグリセリンの形で吸収されますが、消化(分解)されない分は、そのまま排出されます。なお、吸収された脂肪酸とグリセリンは、体内で再び脂肪に変わります。血液中で脂肪が検出されたのは、このためです。
ケルセチンの脂肪吸収の抑制作用は、私たちに多くのヒントを与えます。ウニやイクラなど、脂肪の多い物を食べても、ケルセチンを飲んでおけば、脂肪の吸収を減らすことが期待できそうです。
キーワード: ケルセチン、膵臓リパーゼ、膵液、酵素阻害、脂肪吸収抑制