ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

高尿酸血症に伴う腎機能の低下は、ケルセチンが改善する

出典: Frontiers in Pharmacology 2025, 16, 1660599

https://www.frontiersin.org/journals/pharmacology/articles/10.3389/fphar.2025.1660599/full

著者: Huan Liu, Qi Yang, Shuiying Wang, Tingting Wang, Lihua Pan, Xue Wang, Yangfeng Chi, Zhouhui Jin

 

概要: 尿酸は老廃物の一種ですが、文字通り、尿と一緒に排出されます。しかし、腎臓に異常が生じると、血液中の尿酸が上昇して高尿酸血症を発症します。従って、腎機能の低下と高尿酸血症は、表裏一体の関係にあります。ちなみに尿酸が体内に蓄積すると、足の親指の付根に炎症と腫れを起こして、痛風の発症原因となります。今回の研究では、化学物質で高尿酸血症を誘発したラットにおいて、ケルセチンが腎機能を改善することが見出され、その仕組みも一部が解明されました。

ラット32匹を8匹ずつ4群に分け、1) 化学物質を投与しない正常群、2) 化学物質のみ投与、3) 化学物質とケルセチン50 mg/kgを同時投与、4) 化学物質とケルセチン100 mg/kgを同時投与の各処置を4週間継続しました。なお、2種類の化学物質を用いて、人間の高尿酸血症に特徴的な血液の状態を再現しています。処置期間が終了した後、各ラットの血液中の尿酸値を検査しました。その結果、1) 55 μmol/L、2) 185 μmol/L、3) 160 μmol/L、4) 95 μmol/Lでした。2)の血中尿酸値は正常の1)の3倍以上となり、高尿酸血症の症状を呈しました。一方、3)ではケルセチンが低用量のため効果が不十分ですが、高用量の4)には有効性を認めました。次は、腎機能を評価する血液検査です。腎臓は血液から尿を作る臓器ですので、血液中の老廃物は腎臓で尿に移行します。代表的な老廃物であるクレアチニンは尿に存在すべきですが、腎臓が働かないと血中に残ります。よって、腎機能が低下すると血中クレアチニン値が大きくなりますが、1) 18 μmol/L、2) 48 μmol/L、3) 42 μmol/L、4) 35 μmol/Lでした。1)と2)を比べると、高尿酸血症になると腎機能が低下しています。また、3)と4)の違いは、ケルセチンによる改善効果が低用量では少なく、高用量では十分である事を示します。

高尿酸血症と腎機能の低下が連動しており、用量依存的な(低用量では不十分) ケルセチンの改善効果が示せたので、ケルセチンが腎臓に何を働きかけたかを調べました。高尿酸血症は、血液中だけでなく腎臓でも尿酸が増えていました。尿酸は血液に溶けて存在しますが、腎臓では結晶として析出していました。腎組織の尿酸結晶の数を比較したところ、1)はゼロでしたが、2) 63個、3) 55個、4) 37個となり、ケルセチンは血液中だけでなく腎臓からも尿酸を減らしました。面白いことに、血液で見られた用量依存性は腎臓でも観察されています。さらに腎臓を調べたところ、高尿酸血症は小胞体ストレスを誘導していました。小胞体ストレスとは、異常形状の蛋白質が細胞機能の低下や細胞死をもたらす現象です。小胞体ストレスが起きると発現するCHOPという蛋白質を比較しました。1)における発現量を1.0とした時の相対比は、2) 2.4、3) 2.0、4) 1.6でした。ある器官における小胞体ストレスはその器官の炎症の原因になりますので、尿酸による小胞体ストレスがラットの腎機能を低下したと考えられます。同時に、ケルセチンによる小胞体ストレスの軽減が、高尿酸血症に伴う腎機能の低下を改善しました。

キーワード: 高尿酸血症、ケルセチン、尿酸、腎機能、クレアチニン、小胞体ストレス