統合失調症治療薬ルマテペロンの深刻な副作用はケルセチンの共投与で解消する
出典: Frontiers in Physiology 2021, 12, 674550
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphys.2021.674550/full
著者: H. El-Haroun, S. F. Ewida, W. M. Y. Mohamed, M. A. Bashandy
概要: 統合失調症は脳の病気で、考えや気持ちがまとまらなくなります。幻覚と妄想が主な症状です。最近、ルマテペロンという統合失調症の治療薬が、アメリカで発売されましたが、日本では未承認です。この薬には深刻な副作用が2点あり、うつ状態と副腎毒性です。今回の研究では、ケルセチンが両方とも解決しそうなデータが見出されました。
強制水泳試験という、うつ状態の進行度合いを調べる実験があります。うつ病の薬を開発する初期の段階で、効き目があるかどうか動物実験で確かめるためにしばしば利用されます。文字通り動物を強制的に水中に放り込み、泳がせる実験です。正常な動物なら助かろうと手足を必死に動かしますが、うつ状態にあると諦めてしまい静止時間が長くなります。すなわち、動いている時間が短いほど、うつ状態がより深刻であることを示しています。
ルマテペロンを飲ませたモルモット、ルマテペロンとケルセチンを同時に飲ませたモルモット、どちらも飲ませない正常なモルモットをそれぞれ、5分間水に入れました。正常なモルモットは約180秒間体を動かしましたが、ルマテペロンを飲んだうつのモルモットでは約75秒に低下しました。驚くべきことに、両方飲んだモルモットは約180秒間動き、正常と全く変わりませんでした。ルマテペロンによるうつの副作用は、ケルセチンが打ち消しました。
強制水泳試験の後、解剖してそれぞれの副腎組織を取出し、顕微鏡で詳しく観察しました。副腎とは、腎臓の上側にあり、生命を維持するために必要なホルモンを分泌する器官です。ルマテペロンのモルモットの副腎は、炎症と損傷が進み、ホルモン分泌機能が低下していました。しかし、両方飲んだモルモットの副腎は、正常なモルモットと遜色ありませんでした。ここでも、ルマテペロンの副作用を、ケルセチンが克服しました。
キーワード: ルマテペロン、副作用軽減、うつ状態、強制水泳試験、副腎、ケルセチン