ドキソルビシンで惹起したラットの循環器毒性における ケルセチンとカプトプリルの相互作用
出典: Biointerface Research in Applied Chemistry 2022, 12, 3002–3011
https://biointerfaceresearch.com/wp-content/uploads/2021/08/20695837123.30023011.pdf
著者: Sengottuvel Thangavel, Gopalasatheeskumar Kasiramar, Sundaramoorthi Chenniappan
概要: ドキソルビシンは、悪性リンパ腫、肺癌、乳癌、消化器癌の治療に用いられます。しかしその一方で、循環器(体液を循環させる器官のこと、心臓と血管をひっくるめた言い方)に毒性を示します。癌を放置すると生命の危機に晒されるので、循環器が弱るのを犠牲にしてまでも癌を治す考えの基に、ドキソルビシンによる治療が行われます。
ドキソルビシンの循環器毒性を緩和するには、外部から侵入する悪要因から循環器を守る薬物を使います。ケルセチンの循環器保護作用は、よく知られています。また高血圧の治療に使われるカプトプリルという薬は、循環器を保護する結果、血圧を下げることが知られています。そこで、ケルセチンやカプトプリルが、果たしてドキソルビシンから循環器を保護するのか、ラットで検証しました。
ラットを4つのグループに分け、第1のグループには、1日1回ケルセチンを飲ませます。第2のグループはカプトプリルを飲み、第3のグループはケルセチンとカプトプリルを両方飲み、第4は薬物を何も服用しません。全てのラットは、14日後にドキソルビシンを注射します。癌がないラットにはドキソルビシンはただの毒に過ぎません。第4グループのラットは、心電図に異常が見られ、健康診断で検査の対象となる血中ALT・ASTは急激に上昇しました。ところが、第1および第2のグループでは、ドキソルビシンによる影響がなく、正常な値を保ちました。ケルセチンもカプトプリルも同程度に、強力な毒性を持つドキソルビシンから循環器を保護しました。第3のグループは、有効な範囲に留まりましたが、第1・第2と比べて弱い効果でした。組合せると、お互いの作用を打消す相互作用が働きました。
キーワード: ドキソルビシン、循環器、ケルセチン、カプトプリル