ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

砂糖の摂り過ぎが原因のメタボリックシンドロームは、ケルセチンが解消する

出典: Turkish Journal of Agriculture – Food Science and Technology 2025, 13, 3321–3327

https://agrifoodscience.com/index.php/TURJAF/article/view/8028

著者: Ayça Bilginoğlu Topcu

 

概要: メタボリックシンドロームの原因には食べ過ぎ・運動不足・喫煙・睡眠不足・ストレス・加齢・遺伝と様々な要素がありますが、特にショ糖(砂糖)の摂り過ぎが指摘されています。しかし、疲れた時やストレスを感じた時には、甘い物を食べたくなるのが人間の性で「分かっていても止められない」の代表です。今回の研究では、ショ糖の摂り過ぎを原因とするラットのメタボリックシンドロームを、その根本からケルセチンが改善しました。

16匹のラットの飲み水を32%ショ糖水に置換えて、20週間飼育しました。20週間にわたって濃い砂糖水を飲み水代わりに摂り続けるため、ショ糖の摂り過ぎをラットで実現しています。最後の2週間だけ、8匹ずつ2群に分けて片方にはケルセチン(15 mg/kg)を毎日投与し、もう片方には投与しません。これとは別に8匹のラットを用意し、通常の飲み水で20週間飼育して、ショ糖を摂り過ぎていない正常群としました。20週間が経過した後、人間の健康診断と同様の血液検査を行い、メタボリックシンドロームを評価しました。血中の総コレステロールは正常群の126 mg/dLに対し、非投与群は154 mg/dLに上昇していました。中性脂肪は正常群が29.8 mg/dLで、非投与群では58.6 mg/dLでした。総コレステロール・中性脂肪ともに大幅に上昇しており、長期間にわたるショ糖の過剰摂取がメタボリックシンドロームを招いたことが明らかになりました。ところが、最後の2週間にケルセチンを投与したラットは違いました。ケルセチン投与群の総コレステロール値は136 mg/dLで、中性脂肪値は32.1 mg/dLでした。両指標とも、正常群と非投与群との中間値よりは正常群に近い数値ですので、ケルセチンによる改善効果は明確です。全体が20週間の中で最後の2週間の処置は付け焼刃のイメージですが、実はしっかり効果が出た点が興味深いと言えましょう。

次に各ラットの血液における、特定の酵素活性を比較しました。細胞が呼吸をすると活性酸素種(空気中の酸素が変化したより反応性の高い状態)を発生しますが、活性酸素種は組織を損傷するため除去する必要があります。この活性酸素種の除去を担うカタラーゼという酵素の活性を比較したところ、正常群: 0.8 U/g、非投与群: 0.4 U/g、ケルセチン投与群: 0.6 U/gでした。カタラーゼと似た働きをする2種類の酵素にも、同様の傾向を認めました。従って、メタボリックシンドロームの特徴として活性酸素種が除去され難くなったと状態が挙げられますが、ケルセチンが見事に改善しました。

最後に、チオレドキシン-1という蛋白質に着目した実験を行いました。チオレドキシン-1とは全ての生物が有しており生命の維持に必須不可欠な存在ですが、カタラーゼを始めとする活性酸素種の除去酵素を活性化します。非投与群のチオレドキシン-1は、正常群と比べて血液中で増加し、血管組織で減少するというバランスを欠いた状態でした。ところが、ケルセチン投与群では正常群と同じ挙動に戻り、ショ糖の過剰摂取によるチオレドキシン-1のバランス異常を修正しました。

ケルセチンはチオレドキシン-1の挙動を是正して、メタボリックシンドロームを根本から解決しました。これからは、甘い物をつい食べ過ぎても落ち込む必要はありません。代わりにケルセチンを多く含む玉ねぎやリンゴを多めに摂って、メタボリックシンドロームを予防しましょう。

キーワード: ショ糖、メタボリックシンドローム、ケルセチン、活性酸素種、チオレドキシン-1