ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ケルセチンとレーザー光で歯周病の原因細菌を退治する

出典: Photodiagnosis and Photodynamic Therapy 2025, 56, 105272

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1572100025008038

著者: Maryam Pourhajibagher, Mohammadreza Moeininejad, Bahman Rahimi Esboei, Ehsan Kazemi Moghaddam, Abbas Bahador

 

概要: 歯周病は、歯を支える歯茎や骨が細菌の毒素で壊される病気です。代表的な原因細菌にポルフィロモナス・ジンジバリスがありますが、この菌は不快臭を有する物質を産出するため、歯周病に特有の口臭の原因にもなります。今回の研究では、ケルセチンがポルフィロモナス・ジンジバリスのバイオフィルム形成を抑制し、レーザー光の照射と組合せると更に強力な効果を見出しました。

バイオフィルムとは、固体の表面に形成されるヌルヌルとした薄い膜で微生物の集合体です。浴室や台所の排水口に見られるヌルヌルも、口の中のネバネバもバイオフィルムです。歯磨きできれいに取れるバイオフィルムなら問題ありませんが、ポルフィロモナス・ジンジバリスがバイオフィルムを形成すると、歯茎や骨の破壊が開始され歯周病の発症となります。しかも、歯と歯茎の隙間の奥深い場所に形成するため、歯磨きや口すすぎでは除去できません。

ポルフィロモナス・ジンジバリスが入った試験管を37℃で24時間放置すると、バイオフィルムを形成しました。クリスタルバイオレットという染色液を加えると、バイオフィルムを染色するため紫色を呈します。評価対象の試料を添加して同様の操作で色が薄くなった時、バイオフィルム形成を阻害したと判断できます。そこで、濃度を変えてケルセチンを添加して実験を行いました。濃度は4 μg/mLからスタートして、8→16→32→64 μg/mLと少しずつ濃くした結果、1000 μg/mLで初めて紫色が薄くなりました。従って、ケルセチンがポルフィロモナス・ジンジバリスのバイオフィルム形成を阻害する最小の濃度は1000 μg/mLでした。次に、ケルセチンを添加する代わりにレーザー光を8分間照射しました。濃度を濃くしたのと同様に、強度を徐々に上げて実験した結果、206.4 J/cm2で色の薄まりを認め、バイオフィルム形成を阻害する最小強度と判断しました。

次に、ケルセチンとレーザー光との組合せを検討しました。面白いことに、ケルセチン濃度は125 μg/mL、レーザー光の強度は51.6 J/cm²、照射時間は2分で、バイオフィルム形成を阻害しました。ケルセチンは単独作用時の1/8の濃度、レーザー光の強度と照射時間は単独作用時の1/4に減少出来ましたので、組合せが如何に強力かを物語ります。

最後に、ポルフィロモナス・ジンジバリスの毒素を作る遺伝子の挙動を調べました。リシン特異的ジンジパインという毒素は最も厄介で、歯茎や骨の破壊とバイオフィルム形成の両方に関与します。先程の組合せ条件にて、この毒素の遺伝子発現は通常の22%にまで低下していました。しかし、ケルセチン単独(125 μg/mL)や、レーザー光単独(51.6 J/cm²、2分)では殆ど変化がなく、バイオフィルム形成の実験の結果と良好に一致しました。

以上、ケルセチンとレーザー光は互いに協力し合って、ポルフィロモナス・ジンジバリスを退治しました。歯周病の治療法と予防法に、強力な手段となりそうです。

キーワード: ポルフィロモナス・ジンジバリス、歯周病、ケルセチン、レーザー光、バイオフィルム