ケルセチンはアセチルコリンエステラーゼの阻害とSIRT1シグナル伝達の活性化で、 塩化カドミウムによるラットの記憶機能障害を改善し、海馬の損傷を軽減する
出典: Journal of Functional Foods 2021, 86, 104675
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1756464621003248
著者: G. M. Alshammari, W. H. Al-Qahtani, M. A. Alshuniaber, A. E. Yagoub, A. Al-Khalifah, L. N. Al-Harbi, M. H. Alhussain, S. A. AlSedairy, M. A. Yahya
概要: 塩化カドミウムを吸引すると深刻な中毒を起こします。今回の研究では、ラットに塩化カドミウムのみ飲ませた場合と、ケルセチンを同時に飲ませた場合とを比較して、ケルセチンの解毒作用を検証しました。
明るい箱と暗い箱を用意し、扉で仕切って、2つの箱をつなぎます。まずラットには箱に慣れさせるため、両方の箱を自由に行き来させます。次に、ラットが明るい箱から暗い箱に入った時に、扉を閉めて2秒間の電気ショックを与えます。2時間後、ラットを明るい箱に入れ、留まっている時間を測定します。暗い箱で痛い思いをした記憶が鮮明なら、明るい箱に留まる時間が長くなります。正常なラットが明るい箱に13秒いたのに対して、塩化カドミウムを飲んだラットは4秒と極端に減少しました。この違いこそが2時間前の記憶を反映していますが、ケルセチンを同時に飲んだラットは14秒間明るい箱に留まり、正常なラットと同等でした。
また、ラットの脳にある海馬という部分を検査しました。塩化カドミウムのラットは炎症が進行していましたが、ケルセチンを同時に飲んだラットの海馬は正常と違いありませんでした。
ラットの脳内で起きた現象を詳しく解析した結果、ケルセチンは2通りの作用を発揮しました。一つは、アセチルコリンエステラーゼという酵素の働きの阻害です。これは、20年以上売られているドネペジルというアルツハイマー病の薬と同様の機能で、この酵素を働かなくして症状の進行を喰い止めます。もう一つは、SIRT1という蛋白質の活性化で、最近注目を浴びている長寿の遺伝子が、盛んになった結果として起こる現象です。
キーワード: 塩化カドミウム、ケルセチン、記憶機能障害、海馬、炎症、アセチルコリンエステラーゼ、SIRT1