ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ケルセチンの摂取は、女性のうつ病発症リスクを低下する

出典: International Journal of Food Sciences and Nutrition 2025, 76, in press

https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/09637486.2025.2582562

著者: Piaoyi Tong, Jie Yu, Yaxiao Wang, Hao Yu, Di Wang, Yeqing Gu, Hongmei Wu, Ge Meng, Liyuan Fu, Xuehui Wu, Dandan Zhu, Qing Zhang, Li Liu, Yinxiao Chen, Dongli Wang, et al.

 

概要: うつ病とは、意欲の低下・不眠・食欲不振・疲れやすい状態が2週間以上続く病気です。従って、一時的な気分の落込みとは明確に区別します。世界中に存在するうつ病の患者さんが3億人と推定され、今後も増え続くことが予想されています。今回の研究では、ケルセチンの摂取が女性のうつ病の発症リスクを低下することが示されました。

2013年から2018年にかけて、10,835名が参加した大規模な追跡調査が中国の天津市で行われました。TCLSIHというプロジェクトで”Tianjin Chronic Low Level Systemic Inflammation and Health”の略ですが、直訳すれば”天津市の軽症全身性炎症と健康”となります。健康診断で比較的軽症ながら全身性炎症と診断された10,835名を対象に、その後5年間の健康状態を追跡調査しました。この調査のデータを基に、ケルセチンの摂取とうつ病発症の関連を検証したのが、今回の研究の目的です。全身性炎症が脳に及び脳神経や脳血管に炎症が生じると、うつ病につながります。一方、ケルセチン有する抗炎症作用でうつ病の発症リスクが低減するのではないかという仮説を立てました。

最初の健康診断で既にうつ病・癌・生活習慣病にかかっていた参加者は、今回の調査の対象から除外しました。残る7,766名(平均年齢: 39.5±10.5歳)が対象となり、普段の食生活に関するアンケートを行いました。これは食物摂取頻度質問票と呼ばれ、合計で100品に渡る食品が並んでおり、各人の食べる頻度を答えます。例えば卵なら、毎日食べる・週4~6回食べる・週2~3回食べる・ほとんど食べない・全く食べないの選択肢から一つ選び、1回あたりの量としては卵1個以下・1個・1個以上から選んで回答します。摂取頻度と1回あたりの量から、毎日の平均摂取量が推定できます。1日当たりのケルセチンの摂取量で4グループに分けました。すなわち、中央値が12.3 mgの低摂取群、19.3 mgの中摂取群、26.7 mgの高摂取群、41.4 mgの最大摂取群としました。

うつ病の発症は、多くの病院で採用されているうつ性自己評価尺度で診断しました。「気が沈んで憂うつだ」のような質問が20個並んでおり、「いいえ」「時々」「しばしば」「常に」の回答に1~4の点数がつきます。合計点は最高が80で最低が20ですが、今回は45以上をうつ病の基準としました。7,766名の内1,100名がうつ病を発症し、その内訳は低摂取群308名、中摂取群266名、高摂取群253名、最大摂取群273名でした。低摂取群における女性のうつ病発症を1とした時の各群の発症確率はそれぞれ0.72, 0.69, 0.63であり、ケルセチンの摂取量の増加に伴って減少しました。この数値はオッズ比と呼ばれ、ある事象(今回はうつ病の発症です)が起こる確率を2つのグループ間で比較する際に汎用されます。従ってオッズ比0.63とは、ケルセチンの最大摂取群は、うつ病の発症確率が低摂取群の0.63倍、すなわち37%低減したことを意味します。残念ながら、男性のオッズ比は0.94, 0.84, 0.92で、ケルセチンの摂取効果が殆どありませんでした。

キーワード: うつ病、ケルセチン、TCLSIH、食物摂取頻度質問票、うつ性自己評価尺度、オッズ比