清熱活血湯が関節リウマチを治療する有効成分は、ケルセチンである
出典: Journal of Orthopaedic Surgery and Research 2025, 20, 949
https://doi.org/10.1186/s13018-025-06333-7
著者: Congmin Xia, Tian Chang, Xun Gong, Fuyuan Zhang, Qiuwei Peng, Mengge Song, Chuanhui Yao, Xiaopo Tang, Quan Jiang
概要: 関節リウマチとは、免疫系が自己の関節を異物と間違えて攻撃してしまう、自己免疫疾患の一種です。その結果、関節が炎症を起こし、軟骨や骨が破壊されて関節の機能を損なう病気です。中医学(古来から中国で実践されている病気の治療法)に清熱活血湯という自律神経を整える薬がありますが、今回の研究では、関節リウマチにも有効であることが実証されました。さらに、清熱活血湯に含まれる関節リウマチに効く有効成分を、ケルセチンと特定しました。
軟骨を構成する成分であるコラーゲンを注射したラットは、コラーゲンが作る免疫が関節を攻撃するため、関節リウマチのモデルとして動物実験で広く利用されています。関節リウマチを発症したラット36匹を9匹ずつ4群に分け、1) 薬物投与なし、2) 低用量群として清熱活血湯を8.5 g/kg投与、3) 中用量群: 17 g/kg投与、4) 高用量群: 34 g/kg投与の各処置を35日間継続しました。これとは別に、コラーゲンを注射しないラットを9匹用意して正常群としました。投与期間が終了して、各ラットの関節の状態を比較しました。足首4か所と、人間の親指と小指に相当する外側の指の関節2個分の計20個の関節を見ました。0: 炎症なし、1: 軽度の腫れ、2: 中度の腫れ、3: 重度の腫れ、4: 関節が壊れている、の各スコアをつけ合計します。合計は0~80の点数になりますが、数値が大きい程、関節リウマチの症状が深刻です。正常群: 0、非投与群: 68、低用量群: 58、中用量群: 55、高用量群: 48という結果が得られ、清熱活血湯は用量に応じて関節リウマチの症状を軽減しました。
清熱活血湯が効果を発揮した仕組みを知るべく、各ラットの骨組織に発現しているATF4という遺伝子を比較しました。ATF4とは何かしらのストレスに応答する因子で、正常群の発現量を1とした時の相対比は非投与群: 4.2、低用量群: 3.8、中用量群: 2.8、高用量群: 1.7でした。従って、関節リウマチが骨組織のATF4の発現を上昇し、これを清熱活血湯が低下して症状を改善しました。
清熱活血湯を構成する成分の内、関節リウマチの症状を軽減した成分を調べる実験を行いました。正常群と非投与群の骨組織から骨を作る働きを担う骨芽細胞を採取しました。ATF4の発現量を比較したところ約4倍の違いを認め、先程の骨組織におけるATF4の発現量を反映していました。このATF4が過剰発現した非投与群由来の骨芽細胞に清熱活血湯を添加すると、ATF4の発現が減少しました。そこで、ケルセチンを含む清熱活血湯を構成する上位5成分を一つずつ添加して、有効成分の正体を探索しました。結果は、ケルセチンが最も強いATF4の減少効果でした。注目すべきは、清熱活血湯が骨芽細胞のATF4を減少した濃度が2 mg/mLでしたが、ケルセチン濃度0.036 mg/mLで同等の効果を示しました。清熱活血湯の55分の1でケルセチンが同等の効果を示したことを意味しますので、清熱活血湯がラットの関節リウマチを改善した有効成分がケルセチンであったことが明らかになりました。また、改善の仕組みは、ストレス応答因子であるATF4の低下でした。
キーワード: 関節リウマチ、清熱活血湯、ATF4、骨芽細胞、ケルセチン