デスフルランの吸入による肺組織の損傷とルチンの保護効果
出典: Advances in Clinical and Experimental Medicine 2021, 30, 941–948
https://advances.umw.edu.pl/en/article/2021/30/9/941/
著者: Mustafa Tosun, Hasan Olmez, Edhem Unver, Yusuf Kemal Arslan, Ferda Keskin Cimen, Adalet Ozcicek, Mehmet Aktas, Halis Suleyman
概要: デスフルランは汎用されている吸入型の麻酔薬で、特に全身麻酔に使われますが、副作用もあります。今回の研究では、デスフルランによるラットの肺組織の損傷を、ケルセチンの類似物質の一つであるルチンが緩和しました。ルチンとは、ケルセチンに2個の糖が結合した化合物で、そばに多く含まれます。
ラット18匹を、6匹ずつ3つのグループに分けました。一つは正常な比較対照群として、薬物処置を行いません。第2のグループは、デスフルランを吸入だけを施します。最後の6匹には、ルチンを飲ませた1時間後にデスフルランを吸入しました。その後、ラットは解剖され、肺組織の損傷を比較しました。
デスフルランを吸入だけ施したラットの肺では、炎症の指標物質であるマロンジアルデヒドが正常ラットと比べて約5倍に上昇していました。しかし、予めルチンを飲んでデスフルランを吸入したラットでは、正常ラットとほぼ同等の値でした。腫瘍壊死因子αおよび核内因子κBという、別の炎症指標物質でも、似たような傾向を示しました。両物質とも、デスフルラン群では顕著に上昇しましたが、ルチンを飲むと上昇が抑えられ、正常ラットと同等でした。
次に、それぞれの肺組織を顕微鏡観察しました。デスフルラン単独群の組織には、多形核白血球の炎症・出血・肺胞損傷・むくみが見られました。しかし、ルチンを飲んでいれば、この様な異常が抑えられ、正常な対照群と変わらない肺組織を維持できました。
以上の結果は、ルチンの優れた肺保護効果を示すと共に、安全に麻酔薬を使うためのヒントを示唆していると言えましょう。
キーワード: デスフルラン、副作用軽減、肺損傷、ルチン