男性型脱毛症にてケルセチン・アデノシン・ローズマリー油の組合せは毛髪を再生する
出典: Chemical Engineering Journal 2026, 528, 172193
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1385894725130428
著者: Wenli Cai, Keneng Cai, Zeyu Li, Xiaoru Zhang, Shuqing Gong, Lingling liao, Jiaying Gao, Quangang Xu, Ergang Liu, Jianming Liang, Yongzhuo Huang
概要: 髭の濃い男性は脱毛症になりやすいという俗説がありますが、必ずしも嘘とは言えません。男性型脱毛症の主要因は、男性ホルモンの過剰な活性化による毛乳頭細胞(毛髪の成長を担う細胞)の死と付随する脱毛です。髭が濃くなるのは男性ホルモンの働きですので、活性化するリスクは十分にあります。今回の研究では、ケルセチン・アデノシン・ローズマリー油を組合せた結果、男性型脱毛症のマウスにて毛髪の再生に成功しました。なお、アデノシンとは遺伝子の一つであるRNAを構成する部品のような物質ですが、発毛促進作用があることが知られています。
男性型脱毛症では頭皮に炎症が起きますので、抗炎症作用のあるケルセチンに着目して、アデノシンとの組合せを考案しました。しかし、ケルセチンは水に溶けにくく、アデノシンは逆に溶けやすいという重大な問題がありました。そこで水と油を均一化する「乳化」という現象を利用しました。牛乳やマヨネーズの様なイメージですが、ローズマリー油を用いた乳化物にはケルセチンとアデノシンが溶けました。ローズマリー油は乳化物の油成分であると同時に、抗酸化作用もありますので、男性型脱毛症における酸化ストレスの軽減も期待できます。
マウスの毛髪部分に1日1回、0.5%の男性ホルモンを溶かした溶液を塗って、男性ホルモンが活性化した状態を作り、男性型脱毛症のモデルとしました。20匹のマウスを5匹ずつ4群に分け、以下の処置を行いました。1) 男性ホルモンのみ塗布、2) 男性ホルモンとケルセチンを塗布、3) 男性ホルモンとアデノシンを塗布、4) 男性ホルモンと3種混合の乳化物を塗布。これとは別に、男性ホルモンを塗らないマウス5匹を用意して正常群としました。14日間の処置期間を経た後、各マウスの毛髪の状態を比較しました。正常群の発毛領域は95%でしたが、男性ホルモンのみ塗って薬物処置がないと72%まで減少して大幅に脱毛していました。ケルセチン単独処置群の発毛領域は74%で、回復とは言い難く誤差の範囲でした。アデノシン単独群は78%で、ある程度の回復があり、アデノシンの発毛効果は確かにありました。3種混合の乳化物では3成分が各々の役割を発揮して、発毛領域は85%まで回復しました。次に、1 cm2あたりの毛髪数を比較しました。正常群: 400本、男性ホルモンのみ: 10本以下、ケルセチン単独: 20本、アデノシン単独: 20本、3種混合の乳化物: 77本。
VEGFという蛋白質が頭皮で分泌され、発毛を促進する因子として機能します。いわば発毛がどれだけ起こっているかを知るバロメーターです。頭皮中のVEGFを比較すると、正常群: 78 ng/μg、男性ホルモンのみ: 29 ng/μg、ケルセチン単独: 42 ng/μg、アデノシン単独: 48 ng/μg、3種混合の乳化物: 59 ng/μgというデータが得られました。
従って、ケルセチンの抗炎症作用・アデノシンの発毛促進作用・ローズマリー油の抗酸化作用を組合せると、男性ホルモンが活性化した状態でも毛髪が再生しました。
キーワード: 男性型脱毛症、ケルセチン、アデノシン、ローズマリー油、乳化物、VEGF