ケルセチンは失禁関連皮膚炎を軽減する
出典: Scientific Reports 2026, 16, 6772
https://www.nature.com/articles/s41598-026-37345-w
著者: Yan Zhang, Ge Zhao, Junfang Duan, Dajiang Yuan, Chenli Xu, Lijuan Song, Yinghui Zhang
概要: 失禁関連皮膚炎とは、長時間にわたる尿や便の接触が原因となる炎症性の皮膚疾患です。高齢者が寝たきりになると、失禁の対策としておむつを常時着用します。ゆえに、おむつによって失禁関連皮膚炎を誘発する機会が増えます。主な症状は、皮膚がただれて下部組織が暴露する「びらん」と、それに付随する細菌感染です。今回の研究では、ケルセチンが抗炎症作用を発揮して、失禁関連皮膚炎を軽減したことが発見されました。
ラット30匹を6匹と24匹の2群に分け、多い方には皮膚に人工尿を1日2回を塗ることを5日間継続し、少ない6匹は人工尿を塗らない正常群としました。正常群とは違い、人工尿を塗ったラットの皮膚は表皮が失われ炎症が目立って、失禁関連皮膚炎の状態となりました。炎症の指標となるインターロイキン-1βは、正常群の皮膚で20 pg/mLに対して、人工尿を塗ると90 pg/mLに上昇しました。炎症に加えて皮膚の乾燥状態にも顕著な違いがありました。皮膚から蒸発する水分量を経表皮水分蒸散量と呼びますが、正常群で10 g/m2·h、人工尿群で73 g/m2·hでした。正常であれば、1 m2の皮膚から1時間に10 gの水分が蒸発しましすが、失禁関連皮膚炎になると7倍の水分が蒸発することを意味します。水分が余計に蒸発すると、外部からの刺激を守るバリア機能が低下しますので、経表皮水分蒸散量は皮膚のバリア機能を示すバロメーターでもあります。
失禁関連皮膚炎のラット24匹を6匹ずつ4群に分け、以下の処置を行いました。1) ケルセチンの投与なし、2) ケルセチン25 mg/kg投与、3) 同50 mg/kg、4) 同100 mg/kg。投与期間も5日間とし、インターロイキン-1βと経表皮水分蒸散量をモニターして、炎症とバリア機能を比較しました。1)の炎症に関するインターロイキン-1βは75 pg/mLで90 pg/mLから若干減った程度でしたが、2) 55 pg/mL、3) 35 pg/mL、4) 30 pg/mLと用量に応じた低減が見られ、炎症は軽減されました。
一方のバリア機能は、経表皮水分蒸散量は70 g/m2·hで投与を開始し、1,3,5日目に測定して経過を観察しました。ケルセチン非投与の1)は70→58→55 g/m2·hと減少して、自然に緩和された点は、先程の炎症と一緒でした。2)では59→50→43 g/m2·hと変化して、全てが1)より低い値ですので治療の効果と言えます。面白いことに3)と4)は同じデータが示され、42→31→22 g/m2·hとなり、1)や2)に比べて1日目から大幅に低下しただけでなく、日が経つにつれて差は開きました。効果が3)の50 mg/kgで頭打ちとなり、それ以上増やした4)の100 mg/kgと同じであった点も、興味深い結果です。
以上、ケルセチンは失禁関連皮膚炎の特徴である炎症を抑制し、低下したバリア機能を改善しました。おむつの着用を余儀なくされた高齢者やその介護者にとって、失禁関連皮膚炎を軽減するケルセチンは強い味方になりそうです。
キーワード: 失禁関連皮膚炎、ケルセチン、炎症、バリア機能